
ブログ|尋常性乾癬と再生医療
尋常性乾癬は、赤い発疹と銀白色の鱗屑を繰り返す慢性の皮膚の病気です。治療を続けても落ち着かず、お悩みの方も少なくありません。 この記事では、尋常性乾癬の基本と従来の治療を整理したうえで、当院の医師が学会で発表した「脱毛症治療のための脂肪由来幹細胞注入のあと、尋常性乾癬が寛解した1例」をご紹介します。
尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)は、皮膚に慢性的な炎症が起こり、赤い発疹(紅斑)の上に銀白色の鱗屑が付いてはがれ落ちる病気です。乾癬にはいくつかの種類がありますが、尋常性乾癬はそのうち最も多いタイプで、乾癬の患者さんの大半を占めます。 症状が良くなる時期と悪くなる時期を繰り返しながら長く続くことが多く、見た目やかゆみが日常生活や気持ちに影響することもあります。
はっきりした原因はまだ分かっていませんが、乾癬になりやすい体質(遺伝的な素因)に、ストレス・感染・薬剤・肥満・喫煙などの環境要因が重なって、皮膚の免疫のはたらきが過剰になることで発症すると考えられています。
具体的には、Th17 細胞と呼ばれる免疫細胞が活性化し、IL-17 や IL-23 といった炎症を進める物質(サイトカイン)が増えることで、皮膚の細胞が通常の約10倍の速さで入れ替わるようになります。その結果、皮膚が厚く赤くなり、はがれきれない角質が鱗屑として積み重なります。 この「免疫と炎症のバランス」が、後半でご紹介する学会発表の考察にもつながります。
尋常性乾癬の治療は、症状の範囲や程度、生活への影響に応じて、次のような治療を皮膚科で組み合わせていくのが一般的です。
ステロイド外用薬、活性型ビタミンD3外用薬、その配合薬。治療の基本で、多くの方がまずここから始めます。
ナローバンドUVBなど、特定の波長の紫外線を照射する治療。通院が必要です。
PDE4阻害薬、レチノイド、免疫抑制薬など。症状の範囲や程度に応じて検討されます。
IL-17・IL-23・TNF-αなど、炎症に関わる物質を狙って抑える注射薬。効果が高い一方、費用や感染症への注意、継続通院が必要になります。
一方で、外用薬だけでは効果が不十分な方、光線療法の通院が続けにくい方、生物学的製剤は効果が期待できても費用や副作用の面で慎重にならざるを得ない方もいます。「治療しているのに、繰り返す」ことが、尋常性乾癬の大きな悩みのひとつです。
尋常性乾癬は皮膚だけの問題ではなく、体の中で続いている炎症と免疫のバランスが関わる病気です。皮膚科での治療を続けることを基本にしながら、睡眠・食事・ストレス・体重など炎症に影響する生活習慣を整えること、そして「体の内側から炎症と向き合う」という視点を持つことが、長く付き合っていくうえで役に立ちます。
La Vie clinic(大阪・西梅田)では、尋常性乾癬でお悩みの方のご相談をお受けしています。これまでの治療経過とお体の状態を伺ったうえで、受けられる治療の選択肢とリスク・費用をご説明します。次にご紹介する学会発表は1例の報告であり、乾癬の治療法として確立したものではありませんが、ご相談の参考としてお読みください。
尋常性乾癬のご相談・ご予約はこちら2025年3月22日、第24回日本再生医療学会総会で、当院統括院長の平松 恵梨医師がポスター発表を行いました。演題は『自家脂肪組織由来間葉系幹細胞群を用いた脱毛症治療により尋常性乾癬の寛解を得た1例』です。日々の診療で見られた変化と、そこから感じた可能性をご紹介します。ひとことで言うと、次のような内容でした。
58歳の男性です。長年、尋常性乾癬による赤みや、白くカサカサした皮膚が付く鱗屑に悩まされていました。頭皮と右胸に症状があり、これまでの塗り薬(ステロイド外用)では十分に落ち着かない状態が続いていました。 AGA治療を希望されていましたが、当時は頭皮の乾癬が悪化して範囲が広がっていた時期でもありました。そのため、毛髪を増やすことだけでなく、まず頭皮の状態を整えることにも目を向けました。 当院では、AGA治療と肌再生について再生医療の届出を行っています。今回はその取り組みの中で、ご本人の強い希望のもと、ご自身の腹部から採取した脂肪組織を院内の機器で処理し、幹細胞を含む細胞群を分離。得られた細胞群を、AGA治療を目的として頭皮へ投与するとともに、肌再生の観点から、炎症によって皮膚の状態が悪くなっていた頭皮と右胸の部分にも用いました。細胞が持つと考えられる炎症を調節する働きや、組織の修復を助ける働きに着目したものです。
投与後、明らかな副作用は認めませんでした。投与から1〜2週間ほどで、頭皮と右胸にあった赤みや鱗屑が消えました。この前後に、乾癬の薬を新しく始めたり、ほかの治療を変更したりすることはありませんでした。 学会では、約2週間で症状が改善し、1か月後にはかゆみも消え、6か月後まで再燃が見られなかった経過を報告しました。その後、症状が落ち着いた状態は約1年間続きました。現在は赤みや鱗屑が少し戻っていますが、以前ほどひどい状態にはなっていません。
患者さんの腹部から 165 mL の脂肪組織を吸引し、酵素処理を行ったのち、酵素反応液から遠心分離を使わずに細胞を分離できる細胞濃縮洗浄デバイスを用いて SVF(間質血管細胞群)を取得しました。 最終的に得られた SVF の総有核細胞数は 9.27 × 10⁷ 個、細胞生存率は 79.4 % でした。

発表では、脱毛症治療のために注入した幹細胞が尋常性乾癬に影響した可能性を、免疫のはたらきと先行研究の両面から整理しました。要点をかいつまんでご紹介します。
ADSC は骨髄由来の間葉系幹細胞と同じように、炎症を進めるサイトカイン(TNF-α、IL-17、IL-23 など)の産生を抑え、逆に炎症を鎮める方向のサイトカイン(IL-10 など)が出やすい環境をつくると報告されています。制御性T細胞を増やすことや、エクソソームなどの細胞外小胞を通じて免疫のはたらきを調整することも示唆されています。
尋常性乾癬では、Th17 細胞をはじめとする免疫のはたらきが過剰になり、IL-17 や IL-23 が増えて皮膚の炎症と角化の亢進が続きます。本症例で頭皮と体幹の乾癬が落ち着いた背景には、ADSC が局所的・全身的に免疫バランスを調整し、炎症の悪循環を断ち切ったことが関わった可能性があります。
ADSC を用いた乾癬治療の報告はまだ多くありませんが、乾癬モデル動物で病変の縮小や炎症性サイトカインの低下を確認した研究(Kim ら)や、間葉系幹細胞製剤を自己免疫疾患・炎症性疾患へ応用する検証が海外で進んでいます。本症例の経過は、こうした先行研究と矛盾しないものでした。
本症例は単一の症例報告であり、プラセボ効果や自然寛解の可能性を完全には否定できません。乾癬の臨床像は多様で、すべての患者さんに同じ変化が起こるかどうかは分かっていません。用量・投与経路・治療頻度の最適化と、安全性・有効性の系統的な検証には、対照群を設けた臨床研究の積み重ねが必要です。
まとめ:乾癬には免疫の働きの乱れが関わり、一方で脂肪組織由来の間葉系幹細胞には、組織の修復を助ける働きに加え、免疫や炎症を調節する働きがあると考えられています。今回の変化にもこうした働きが関わっていたのではないかと考え、免疫の仕組みという面からも検討する意味があると感じて学会で報告しました。もちろん、この1例だけで、細胞の投与によって乾癬が改善したと断定することはできません。それでも、実際に見られた経過を記録し共有することが、次の研究につながると考えています。
本症例で行ったのは、当院が再生医療等安全性確保法に基づく届出のうえで提供している、自己脂肪組織由来の幹細胞群を用いた第三種再生医療(毛髪再生・肌の再生を目的とした治療)です。治療の内容・流れ・リスク・費用は各ページをご覧ください。
費用は 料金ページ(アンチエイジング) に掲載しています。
A. 尋常性乾癬は慢性の病気で、良くなったり悪くなったりを繰り返すことが多いですが、外用薬・光線療法・内服薬・生物学的製剤など治療の選択肢は年々増えており、症状がほとんど出ない状態(寛解)を目指すことができます。治療は皮膚科での継続が基本です。
A. うつりません。尋常性乾癬は感染症ではなく、免疫のはたらきが関わる炎症性の皮膚の病気です。
A. 当院の自己脂肪由来幹細胞を用いた治療は、毛髪再生や肌の再生を目的として、再生医療等安全性確保法に基づく届出のうえで提供している第三種再生医療です。尋常性乾癬の治療法として確立した医療ではなく、今回の発表も1例の報告にとどまります。効果を保証するものではありません。
A. はい。La Vie clinic(大阪・西梅田)では、これまでの治療経過やお体の状態を伺ったうえで、受けられる治療の選択肢とリスク・費用をご説明します。現在の治療を自己判断で中断せず、まずはご相談ください。
A. 自由診療(保険適用外)で、治療内容ごとの費用は料金ページの「アンチエイジング」タブに掲載しています。ご自身の細胞を用いるため拒絶反応のリスクは低いと考えられますが、脂肪の採取部位や注入部位の腫れ・内出血・痛み・感染などが起こる可能性があり、効果の現れ方には個人差があります。
当院では、これからも肌再生や毛髪再生の診療で得られた気付きを大切にしながら検証を重ね、学会発表や論文を通じて報告していきます。あわせて、乾癬に関する研究の準備も進めています。研究への協力に関心をお持ちの方は、当院へお問い合わせください。
お問い合わせはこちら発表演題:自家脂肪組織由来間葉系幹細胞群を用いた脱毛症治療により尋常性乾癬の寛解を得た1例
発表者:平松 恵梨(La Vie clinic 統括院長)
発表学会:第24回日本再生医療学会総会(2025年3月22日)
これまでの治療経過とお体の状態を伺ったうえで、 受けられる治療の選択肢とリスク・費用を医師がご説明します。

La Vie clinic 統括院長 平松 恵梨
本記事は、第24回日本再生医療学会総会(2025年3月22日)でのポスター発表の内容をもとに、発表者である平松医師の監修のもと作成しました。
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